コミュニケーションエラーとは
「伝えたはずなのに、相手は誤解していた」という経験は誰もがお持ちかと思います。
逆に、相手の意図を汲んであげたのに、後で相手から「そんなつもりじゃなかったのに」と言われた経験もあるのではないでしょうか。
コミュニケーションエラーはそのような失敗、誤り、エラーを指す言葉です。
コミュニケーションはいろいろな側面を持っているため、コミュニケーションエラーも単純には扱いにくいのですが、ここでは仕事の中で発生するコミュニケーションエラー、事故やトラブルを引き起こす側面に限定してコミュニケーションエラーを考えようと思います。
目次
1.この記事の対象
この記事は、以下のような方に向けて書かれています。
- コミュニケーションエラーについてざっくりと知りたい方
- コミュニケーションエラーの対策についてざっくりと知りたい方
2.コミュニケーションエラーの範囲
多くの仕事は、複数の人が協力して1つの課題を遂行します。
コミュニケーションは、課題を遂行するために必要な情報を、メンバー間で共有するために行われます。
共有が不十分なために課題の遂行ができず、被害が生じた場合に、コミュニケーションエラーが発生したと考えます。
会話の中で誤解がすぐに解けたような場合に、コミュニケーションエラーと考えるかどうかは微妙です。
被害は小さいし、課題の遂行には問題がない一方、発生のメカニズムや要因については同じだからです。
ここでは、その場の会話によって誤解が解消できたのであれば、コミュニケーションエラーと呼ばないこととします。
3.コミュニケーションエラーの事例
筆者が、まだ小さい子供の頃の話です。
料理をしている母親からカレーを買ってくるようお使いを頼まれました。
今晩はカレーライスだとわくわくしながらスーパーマーケットへ行き、急いで帰り、どや顔でカレーを渡しました。
返ってきた言葉は「ありがとう、よく分かったね」ではなく、
「なんで、これ買ってきたの!」
でした。
私は驚き、そしてとてもがっかりしました。
辛くない、一番おいしそうなカレールーを選んだ自信があったのです。
母は言いました。
「今晩は時間がないからレトルトカレーにするつもりだったの」
台所を見ると、水だけが入った鍋と、サラダがあるだけです。
その日の夕食がどうなったのか、記憶はありません。
さてこのズレはどうして発生したのでしょうか。
情報の発信者である母親は、買うべきカレーは、カレールーではなくカレーのレトルトだということを伝えていませんでした。
あるいは、伝えたけれど、子供がちゃんと聞いていなかったのかもしれません。
情報の受信者である子供は、台所で料理している様子から、カレーを肉と野菜とカレールーから作ってくれるものと思い込んでいたのかもしれません。
また、レトルトカレーは昼食でたまに食べるくらいで、夕食にレトルトカレーを食べた経験がなかったせいかもしれません。
そして、このコミュニケーションエラーのため、その日の夕食は予定通りには行かず、つまりは課題が遂行されなかったわけです。
家庭での事例を紹介しましたが、仕事の場面でも同じです。
複数の人が関わる仕事で、必要な情報が伝わらないこと、情報が誤って伝わることで事故が発生したり、作業が滞ったりすることがあります。
コミュニケーションエラーの防止は、仕事においても重要な課題です。
4.コミュニケーションエラーの防止
コミュニケーションエラーを防止する対策の代表的なものが、「復唱」と「確認会話」です。
鉄道事業者と関連事業者約300社へ調査した結果、復唱は回答者の88%、確認会話は65%で実施されていました(中村ら、2020)。
- 中村 竜、小野間 統子、北村 康宏、増田 貴之:コミュニケーションエラー防止対策の実態調査、鉄道総研報告、Vol.4、No.1、pp.31-36、2020
ただ、事業者によって何が復唱か、何が確認会話かの認識は異なっていました。
そこで、ヒアリング調査をしたところ、「確認会話を実施している」と回答していた14事業者のうち、「指示を受けた側が、指示内容をただくり返すのではなく、別の言葉で言い換えたり、その結果として起こることを相手に伝える」を実施していたのは5事業者のみでした(中村ら、2020)。
ここから確認会話の実施率は65%よりもかなり小さいことがうかがえます。
その他の対策の例としては、以下のものがありました。
- 第三者による確認:電話の内容を複数人で聞き、確認するなど
- 相手に合わせたコミュニケーション:相手の理解度を、指示した側が確認するなど
- 要注意用語・表現の共有:リスト化して共有し、使用時に意味を相互確認するなど
「復唱」「確認会話」スキル向上のために
社員同士や取引先と間で正しい情報が伝わらないことにより、作業が進まなかったり、事故やトラブルに発展するコミュニケーションエラーを防止するため、「復唱」「確認会話」のスキルを向上させることが重要です。
「情報伝達ミス防止訓練教材」は、研修や自主学習に使用できる教材です。
ぜひ、この教材を用いてコミュニケーションエラーの防止を目指してください。