エラー防止のためのフォーラム・シアター研修
上司や先輩の発言や行動に違和感があっても言い出せず、その結果、パフォーマンスが落ちたり、事故になったりすることがあります。
このような事故を防止するために航空業界で開発され、多くの分野で応用されている訓練として、CRM訓練(Crew Resource Management Training)があります。
しかし、この訓練でも、上下関係の意識(権威勾配)が強い文化の中ではうまく機能しづらいようです。
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本記事では、権威勾配の上位にいる相手に意見を言えるようにするための研修手法について紹介します。
どのような言い方なら角が立たないか、相手の間違いや考えを変えることができるか、その対処方法のバリエーションを知ることで、声を上げやすくしようという研修です。
目次
1.この記事の対象
この記事は、以下のような方に向けて書かれています。
- 先輩や上司に意見が言えないと悩んでいる人
- チームワークが悪いためトラブルが多い職場を改善したい人
- エラー防止、事故防止のための研修を探している人
2.権威勾配:難しいコミュニケーション場面
知識や技能が高い学者・専門家を「〇〇の権威」と言ったりします。
権威勾配における「権威」には、知識の豊富さや技能の高さの他に、人事権を持っていたり、財力を持っていたり、ただただ圧が強かったりする人も含んでいます。。
そういう人々に対して、他の人はなかなか意見が言えないものですが、それが何らかの弊害になる場合に「権威勾配」が強いと言われます。。
上司や先輩など権威勾配の上位にある人は、一般的には能力が高く、判断が的確です。しかし、人間ですから時には間違った考え方をしたり、行いをしたり、言ったりすることもあるでしょう。
その稀なことに対して、権威勾配の下位にある人が指摘することは容易ではありません。聞いてもらえない懸念、自分への評価を悪化させる懸念、自分の方が間違っているかもという懸念などがあるからです。
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指摘することができていれば、組織としてのパフォーマンスの低下や、事故などの損失を回避することができたかもしれません。これが、権威勾配によるコミュニケーション不全の典型的場面です。
権威勾配への対処は難しく、弊社で販売している「情報伝達ミス防止教材」でも、このような場面でのコミュニケーションエラーを扱っていません。
3.フォーラム・シアター研修とは
フォーラム・シアターは、ブラジルの演劇教育家アウグスト・ボアールが1970年代に始めた取り組みで、現在では世界各国で学校教育や市民啓蒙活動、企業研修などに用いられています。
とくに、イギリスでは企業研修として広く使用され、それを請け負う組織等が80余りもあるそうです。
Birch, P. (2014). Forum conversations : an organisational theatre method for improving managers' interpersonal communication.
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企業研修の目的は様々で、たとえば、ハラスメント研修やリーダーシップ研修として行われたり、職場における難しい会話への対処方法の練習のために行われたりします。
手順としては、まず、参加者が直面する困難な会話場面を含む問題のある物語を作ります。参加者同士で相談して作ったり、事前に調査して作成したりします。
次に、その物語を演じて、他の参加者はそれを観ます(シアター)。
そして、物語の中の状況について、問題点や改善点について小集団で話し合います(フォーラム)。
そのあと、もう一度同じ物語を演じます。ここで、他の参加者は途中で声を掛けて話を止め、介入することができます。登場人物に成り代わり、新しい台詞を言って、問題のある物語をよりよい結末へ導くようトライします。
それを繰り返して、最後に、全体で問題について話し合います(フォーラム)。
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ポイントの1つめは、演劇による問題提示の効果です。参加者は、生きた人間が目の前で苦しんで、困っている様子を観て、なんとかしたいと思います。演劇は、映像や文字よりも、強く参加者に訴えてきます。
2つめは、介入の効果です。他の演者はアドリブで抵抗しますので、物語をよい方向に進めるのは一筋縄ではいきません。介入者にとっては、難しい対処の予行演習、訓練になります。また、それを観ている参加者にとっては、対処方法のバリエーションを知る機会になります。
3つめは、話し合いがより活発になることです。参加者が問題に深く入り込むことにより、研修終了後も話題に上がったり、現実場面で同じ場面に出会ったりしたときに、よりよい対処ができるようになります。
以上のような効果があるため、権威勾配の上位の相手に対して、発言や意見をすることがより容易になり、組織としてエラーを減らすことができるのです。
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4.研修の準備作業
研修を成功させるには、台本化する状況がどれだけ現実的で、身近で、身につまされるかがポイントになります。そのためには、参加者が正直に体験を話すことができるよう、心理的に安全な状況を作ることが必要です。
無記名の事前アンケートはそれを実現しやすいですが、詳細な状況が伝わりにくい傾向があります。対象者が特定されない形での第3者による事前インタビューは、手間はかかりますが状況をより細かく確認できる利点があります。
台本には、権威勾配の上位と下位、その中間など数名の登場人物を設定し、参加者が指摘しやすい問題行動や言動を複数入れ込みます。また、介入を促す主人公を誰にするかも決めて台本を作ります。
演じる人をどうするかも問題です。プロの俳優を雇い事前に稽古を重ねることが最良ですが、社員で対応することも可能です。台本を手にしてそれを読むことを主として、演技はできる範囲で行います。
フォーラム・シアターでは、ファシリテーターをジョーカーと呼びます。ジョーカーは、議論を促したり、介入を促進したり、全体のコントロールをします。この役は簡単にはできませんので、当初は専門家に担当してもらう必要があります。
参加者は30名程度が標準です。多すぎると介入して皆の前で演じることへのハードルが高くなります。最大でも60名程度でしょう。逆に、少ないと効果的ではありますが、研修の回数が多くなることで負担が増していきます。
5.まとめ
組織としてのパフォーマンスの低下や事故などの損失を回避するために、上司や先輩など権威勾配の上位にある人に対して、必要な場面で意見が言えるよう促す研修方法として、フォーラム・シアター研修を紹介しました。
これは、既存の手法であるCRM訓練や「情報伝達ミス防止訓練教材」では対応できないコミュニケーション不全に対処できる研修です。
ぜひ、御社の研修に取り入れることをご検討ください。
ご相談は以下の問い合わせフォームからお願いします。
「復唱」「確認会話」スキル向上のために
権威勾配が問題にならない状況では、「情報伝達ミス防止訓練教材」をお勧めします。
この教材では、社員同士や取引先と間で正しい情報が伝わらないことにより、作業が進まなかったり、事故やトラブルに発展するコミュニケーションエラーを防止するため、「復唱」「確認会話」のスキルを向上させることができます。
ぜひ、この教材を用いてコミュニケーションエラーの防止を目指してください。

