指差喚呼効果体感ソフトを使った研修のやり方

公益財団法人鉄道総合技術研究所が作成した「指差喚呼効果体感ソフト(SimError 指差喚呼編)」は、指差喚呼(指差呼称)の5つのエラー防止効果を実際に体感し、その重要性について理解を深めることで、指差呼称の定着を図るための教材です。

この教材は社員研修での使用を想定して作られています。本記事では、教材を使ってどのような研修ができるのか、その注意点等について紹介したいと思います。

なお、教材は自習として使用することも可能ですので、その点についてはQ&Aで触れたいと思います。

また、商品名の「指差喚呼(しさかんこ)」は主に鉄道業界で使用されていますが、一般的には「指さし呼称(ゆびさしこしょう)」「指差呼称(しさこしょう)」と言われます。本記事では、商品名以外は、指差呼称と表記します。

公園で上を指差す女性

目次

  1. この記事の対象
  2. 指差喚呼効果体感ソフトとは
  3. ソフトを使った研修のやり方
  4. 研修に関するQ&A
  5. まとめ

1.この記事の対象

この記事は、以下のような方に向けて書かれています。

  • 「指差喚呼効果体感ソフト」の使用イメージが沸かない方
  • 「指差喚呼効果体感ソフト」を使った研修のやり方を知りたい方

2.指差喚呼効果体感ソフトとは

指差呼称がエラーを防止する効果は実験で確かめられています。

しかし、日頃作業を行う場面ではエラーそのものが少なく、また、日頃行っていた指差呼称をたまたま怠ったときにエラーをするという体験がめったにないことから、指差呼称のエラー防止効果を実感することは難しいのが現状です。指差喚呼効果体感ソフトは、指差あるいは呼称をしないときとしたときとを順に行い、両条件でのエラー数を比較し、指差呼称をした方がエラーが減ることを体感することができます。そして、エラー防止効果を腹落ちすることで、作業場面での意識を持った指差呼称、省略しない指差呼称の定着を目指すものです。

作業着の男性が納得した様子

3.ソフトを使った研修のやり方

たとえば、5人を一度に研修する場合、6台のパソコンと6本のソフトを用意します。うち1台は、講師が使用します。一度に参加する人だけ(講師を含む)、パソコンとソフトが必要とお考え下さい。

図1にソフトを使った研修の流れを示します。

ソフトを使用した研修の流れ
図1 ソフトを使用した研修の流れ

図1の左側の緑の部分は、講師が準備して実施する必要があるものです。
中央の黄色い部分は、「指差喚呼効果体感ソフト」のスライドを使い、講師が自分の声で説明する部分です。説明については自動音声の利用も可能ですが、講師の生の声での解説を推奨します。
右側の青い部分は「指差喚呼効果体感ソフト」で自動的に実施される部分です。

講師による「趣旨説明」のあと、各自の机の上のパソコンで「指差喚呼効果体感ソフト」の1つの課題を実施させます。全員が終了して、自分の成績を確認した後、講師が実施した課題についての解説を行います。その後、5名前後の小グループで課題の結果や指差呼称について討議してもらいます。同じようにもう一つ課題を実施したら、研修のまとめをして終了します。ここまで、1時間で行います。

以下に、もう少し詳しく書きます。

3.1趣旨説明

研修の導入には、「日頃行っている指差呼称について常に実施していますか」「やらなくても大丈夫と思うことはありませんか」「指差呼称でエラーを防げていると思いますか」などを尋ねてみたりします。このような導入により、参加者は普段行っている指差呼称について思い出し、振り返ることができ、指差呼称について学ぶ準備が整います。研修の趣旨は、「指差呼称がエラーを防ぐ効果があることを体感し、今後の作業において着実に指差呼称をしてもらうため」などと説明します。

3.2課題の実施

ID入力画面でID・年齢・性別・モードを入力しますが、モードを研修モードに指定する以外は、個人を区別して入力する必要はありません。

課題は5つありますので、講師が1つを指定して、研修生に対応するボタンをマウスでクリックさせ、各自のペースで課題を実施してもらいます。

課題はスライドと音声での説明、練習、本番1(指差呼称なし)、本番2(指差呼称あり)の順で進みます。最後に本人の成績がグラフになって表示されます。
指差呼称の課題実施結果の模式図

3.3課題の解説

講師用のパソコンはプロジェクター等に接続し、研修生に大画面で提示できるようにしておきます。講師は、ID入力画面で先生モードを指定し、解説画面を提示します。

講師は、実施した課題の意味、日常場面の指差呼称との関係について話します。

3.4グループ討議

討議内容は、実施した課題結果と課題の特徴と類似した仕事の中で間違えやすい場面について話し合ってもらい、そのような状況で指差呼称ができるか、するとしたらどのようにするかなどについて、5分程度話し合ってもらいます。

同じ作業をするメンバーでしたら問題ないのですが、共通の作業のないメンバーが混ざっているような研修では、誰でもが共通で知っている交通場面や日常場面で話し合ってもらいます。

3.5研修のまとめ

2つめの課題も終了した後、講師が研修のまとめを行います。研修の趣旨、実施した課題を振り返り、指差呼称がエラーを防止する効果についてより強く納得してもらい、今後の実作業での意識ある実施を促せるようにまとめます。

パソコンでの研修で講師が話す

4.研修に関するQ&A

よくある質問について、ここでQ&Aをまとめておきます。

Q 一度に何名の研修ができますか。
A 1名に1台のパソコンとソフトが必要です。講師1名であれば、50名くらいが適切でしょう。

Q 1つのソフトで研修はできますか。
A 研修生1名に代表で課題を実施してもらい、他はそれを見るという形で行うことも可能です。ただ、自分で課題を行うほどには、効果を実感することができないことが難点です。

Q 課題を一度にすべて行ってもよいでしょうか。
A 5つの課題を一度に行うのは、研修生の疲れと飽きが懸念され、推奨いたしません。一度に2つまでの実施を推奨します。1つにして、映像など別のツールと組み合わせてもいいでしょう。

Q 繰り返し研修は行えますか、その間隔はどのくらいでしょうか。
A 1年間隔で、2つの課題を行うことを推奨します。組み合わせパターンを変えて、繰り返すとよいでしょう。

Q 自習での使用方法について教えてください。
A ID入力画面で自習モードを選ぶと、結果表示の後に解説が音声付で表示されます。ただ、最初から自習として利用すると、ゲームのように課題ができたかできなかったかという結果にばかりに興味が向き、指差呼称を促す教育効果につながらない懸念があります。研修の後に自習する、あるいは、自習後に指差呼称に関する感想文や宣言文を書かせるなどの工夫が必要になります。

5.まとめ

「指差喚呼効果体感ソフト」を使った研修のやり方について説明しました。

  • より詳しい内容は、「研修マニュアル」(16頁)にまとめてあります。問い合わせの資料請求から入手ください。
  • 指差呼称の定着のために

    指差呼称がエラーを減らすことは実験により確認されていますが、その効果を実感することがしにくく、形骸化が危惧されています。

    公益財団法人鉄道総合技術研究所が開発した「指差喚呼効果体感ソフト(SimError 指差喚呼編)」は、指差喚呼(指差呼称)の5つのエラー防止効果を実際に体感し、その重要性について理解を深めることで、指差呼称の定着を図るための教材です。

    ぜひ活用して、指差呼称の形骸化を防いでください。

    指差喚呼効果体感ソフトの説明

    指差喚呼効果体感ソフトの説明資料のダウンロードバナー お問い合わせ 指差喚呼効果体感ソフトのカタログ(テスホームページへ移動します)説明

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